2020/03/26

航空旅客への打撃は28兆円予測、航空会社が返金先延ばしの兆候も

 国際航空運送協会(IATA)は3月24日付けで新型コロナウィルス(COVID-19)による影響の予測を更新し、航空会社による旅客輸送事業の収益は2019年比で44%、2520億米ドル(約28兆円)減少するとの見通しを示した。IATAが3月5日に発表していた影響額は1130億米ドルで、2倍以上に増加したことになる。
 予測値の更新は各国が厳しい渡航制限を実施していることを受けたもので、新しい予測値はこれらの措置が最大3ヶ月続き、今年後半にかけて緩やかに景気が回復するとのシナリオに基づくもの。
 IATA事務総長のアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック氏は、「航空業界は最大の危機にひんしている」とコメントしたうえで、「(各国政府の)迅速な救済策が実現しなければ、産業として存続し得ない」と危機感を強調。航空会社は2000億米ドル規模の流動性支援を必要としているとした。

オートリファンド停止、返金1年後も-旅行会社は板ばさみ

航空各社は新規予約の大幅減によって収入が止まる一方、運休などによって払い戻しが殺到する苦境にあるが、そうしたなかで日本では複数の外国系航空会社がリファンドの手続きを変更し、旅行会社とエンドユーザーである旅行者に負担を強いようとしている。
 具体的には、通常であればGDSのオートリファンド機能によって旅行会社が簡便かつ短期で払い戻しを受けられていたところから、これを禁止して「RAN(Refund Application Notice)申請」と呼ばれる個別の手続きを義務付け。これにより旅行会社にとっては手続きが煩雑になるほか、申請に対する審査を経た返金までの期間がオートリファンドに比べて長期化し、顧客対応のなかで多額の立て替えが発生する可能性も生じる。
 トラベルビジョンが収集した情報のなかでは、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)、スイスインターナショナルエアラインズ(LX)、オーストリア航空(OS)、エールフランス/KLMオランダ航空(AF/KL)、シンガポール航空(SQ)などがこの措置を取っており、ベトナム航空(VN)は書面のなかで「支払い処理までに約9ヶ月から12ヶ月間を要します」と記している。
 また、航空券のなかには運賃規則で払い戻しが認められていないものもあるが、そうした航空券であっても欧米ではフライトが運航されなかった場合には返金が義務化されているところ。しかし、こちらについても航空会社によっては、1年間有効なEMDを発行して1年間未使用の場合にようやく払い戻すと告げている。

オートリファンド禁止が判明した航空会社一覧

アエロフロート・ロシア航空(SU)、アビアンカ航空(AV)、エールフランス航空(AF)、オーストリア航空(OS)、ガルーダ・インドネシア航空(GA)、KLMオランダ航空(KL)、シンガポール航空(SQ)、スイスインターナショナルエアラインズ(LX)、ターキッシュエアラインズ(TK)、フィジーエアウェイズ(FJ)、ベトナム航空(VN)、マリンド・エア(OD)、南アフリカ航空(SA)、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)
(2020年3月25日15時現在)

アリタリア、羽田就航を延期、成田線も4月は運休

アリタリア-イタリア航空(AZ)は3月30日を予定していた羽田/ローマ線の就航を5月2日に延期することを決めた。新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響を受けたもの。成田/ローマ線と成田/ミラノ線も4月中はすべて運休する。

スターフライヤー、コロナで41億円借入、運転資金確保

スターフライヤーは3月25日、北九州銀行や三井住友銀行など7行から41億円を借り入れると発表した。無担保、変動金利で5年以内に返済する。新型コロナウィルスの感染拡大で需要が減少し来期の見通しが不透明であることから、借入金を運転資金に充当するという。

2020/03/25

KNT-CTホールディングス、コロナで通期予想を大幅修正、最終赤字99億円に

KNT-CTホールディングスは3月24日、昨年10月に上方修正していた2020年3月期(19年4月1日~20年3月31日)の通期業績予想の下方修正を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて売上高が大幅に減少していることを受けたもので、売上高は前回発表から7.7%減。営業利益と経常利益はマイナスに転じともに33億円以上の赤字となる予想で、最終赤字は約99億円を見込む。

外務省、欧州20ヶ国の感染症危険レベルを3に、残りも2

外務省は3月23日付けで、欧州18ヶ国の全土に感染症危険レベル3の渡航中止勧告を発出した。欧州における新型コロナウイルスの感染拡大を受けたもの。すでに全土をレベル3にしていた2ヶ国を加えて、計20ヶ国に渡航中止勧告を発出したこととなる。
 残りの16ヶ国については、引き続き全土をレベル2とする。詳細は以下の通り。
【アンドラ、イタリア(※)、エストニア、オーストリア、オランダ、スイス(※)、スペイン(※)、スロベニア、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、バチカン、フランス、ベルギー、マルタ、モナコ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク】
●上記各国全土
レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)(引き上げ)
(※)のすでにレベル3を発出している地域については継続
【アイスランド、サンマリノ】
●上記各国全土
レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)(継続)
【アイルランド、英国、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スウェーデン、スロバキア、チェコ、ハンガリー、フィンランド、ブルガリア、ポーランド、ポルトガル、ラトビア、リトアニア、ルーマニア】
●上記各国全土
レベル2:不要不急の渡航は止めてください(継続)

外務省、米国全土の危険レベルを2に-相互に14日間待機要請

外務省は3月22日付けで、米国の全土について発出していた感染症危険レベルを1の注意喚起から2の「不要不急の渡航は止めてください」に引き上げた。同国における新型コロナウイルスの感染拡大を受けての措置で、全土における感染者はすでに3万人を超えている。
 一方、米国の米国疾病予防管理センター(CDC)は現地時間の21日に日本を含む5ヶ国の危険レベルを3の「不要不急の全ての渡航を回避してください」に引き上げたところ。日本から米国への入国者は対しては、入国後14日間の自主検疫などを推奨する。日本政府も26日から4月末までは、米国全域からの入国者に対してホテルなどでの14日間の待機や、公共交通機関の使用自粛を要請することとしている。

ドイツ オーバーアマガウ、「キリスト受難劇」2022年まで延期に

ドイツ南部の町・オーバアマガウにて10年に1度開催される「キリスト受難劇」(パッションプレイ)は、当初2020年5月16日(土)~10月04日(日)の日程にて開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、2022年まで延期されることとなりました。

出国者数、2月はコロナで14%減に-訪日は58%減、中国9割減響く

日本政府観光局(JNTO)が3月19日に発表した統計によると、今年2月の日本人出国者数(推計値)は前年比14.2%減の131万6800人、訪日外国人旅行者(同)は58.3%減の108万5100人となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が数字となって現れた形で、出国者数の2桁減は中国と韓国への旅行者減の影響を受けた2015年2月以来5年ぶり。訪日客数の減少幅は、東日本大震災発生後の11年4月の62.5%減に次ぐ、1964年以降では過去2位の大きさとなった。3月についてはさらなる落ち込みが見込まれる。

 19日に開催した定例記者会見で、観光庁長官の田端浩氏は「非常に厳しい状況だが、国内の感染拡大こそが最大の支援策」との認識を示すとともに、引き続き関係省庁と連携して、感染の封じ込めに努める考えを表明。あわせて現在を「助走期間」と捉え、具体策については語らなかったものの、収束後の反転攻勢に向けたプロモーションの準備を進める考えを説明した。

 一方で今後については「状況はさらに厳しくなる。収束の見通しについては不明」とも述べ、まずは海外旅行と訪日旅行に先駆けて、国内旅行の需要が早期に回復することに期待。「感染を抑制できる環境を早期に作り、できる限り通常の行動をしていただけるようにしたい」との意向を示した。

 なお、市場別の訪日客数は、1月27日に団体ツアーなどの販売が禁止された中国が、今年は1月に春節を迎えたこともあり87.9%減の大幅減。日韓問題の悪化により訪日旅行需要が冷え込んでいた韓国は79.9%減、そのほか台湾は44.9%減、香港は35.5%減となり、これら4市場では71.9%減となった。主要20市場のうち増加したのはインドネシア、フィリピン、ベトナム、豪州、ロシアの5市場のみだったが、これらはいずれも2月の最高記録を更新。田端氏は今年の訪日客数の政府目標である4000万人の数値については「変わらない」と伝えた。

 なお、1月と2月の合計は、出国者数が9.7%減の269万7600人、訪日客数が29.2%減の374万6100人。田端氏は3月の状況については、第3週の国際線の便数が1月20日時点の計画の6割減となっていることのみ説明した上で、改めて「より厳しいものになる」と語った。

新型コロナ、派遣添乗に影響甚大、個人向け共済貸付も

日本添乗サービス協会(TCSA)は3月19日、2020年度の通常総会と記者会見を開催し、新型コロナウィルスの感染拡大が添乗員派遣に大きな影響を及ぼしている現状を報告した。会長の三橋滋子氏は会見の冒頭、「会員会社は仕事が99%ないような状態。大変苦慮している」と説明。そして「添乗員も苦しんでいるし、会員会社もほとんどが添乗派遣をメインの仕事にしているので非常に厳しいのが現状」であるとした。
 会員各社のなかでは添乗員を常用雇用している会社もあるものの、多くが「業務が発生した時の短期雇用の繰り返し」の登録型で、案件が発生しなければ給与も支払われることはない状態。
 こうしたなか、協会としては観光庁などからの情報を会員各社に発信しているほか、共済会で個人に対する貸付を実施。3年以上の勤務経験などの条件はあるが、1口5万円で4口まで、2年間無利子で貸し付けるもので、所属する会員企業が保証することで利用可能。過去にも東日本大震災の際を含めて2度実施していたが、今回はこれまでよりも申し込みのペースが早いといい、今後も積極的に案内していく方針だ。
 また、厚生労働省の雇用調整助成金についても、雇用保険の加入や雇用形態などの条件によって申請が可能かどうかが左右され、さらにハローワークによって見解が異なることもあるといい、情報の取りまとめやアドバイスを実施。会員各社からは条件緩和の働きかけや、常用雇用型でない添乗員向けの窓口を開いてほしいといった要望が寄せられているところで、「たやすいことではないが、やれる限り」取り組んでいくという。